落語を聴いた日

ナマで落語を聴いた日の覚書と、落語に関係するあれこれについて書きます。

6/14 立川志らくのシネマ落語 特別編 vol.10 スティング@紀伊國屋ホール

6月14日

(開口一番はプログラムに掲載されていましたが、取りやめでした。)

「湯屋番」 立川志らく

「あくび指南」 立川志らく

仲入り

「看板のピン」 立川志らく

「シネマ落語 スティング」 立川志らく 好みは人それぞれですよね。私はギャング映画はあまり好きではありません。でも、元の映画を見てからの方がきっとおもしろい、と思い、映画"スティング"は事前にレンタルで見ました。 3席やった古典落語がキッチリこの「シネマ落語 スティング」に関連していたので、びっくりしました。さすが!

(今回の感想は、私的理由でようやく今日書きました。遅れたこと、短いことは、内容とは関係ありません。)

5/31 みなと毎月落語会 立川志らく独演会@麻布区民センター

5月31日

開口一番 「たらちね」 立川志ら鈴 最近一番多く聴いている前座さんかもしれません。なんとなくこの人の口調にこちらが慣れて来ました。婚礼の話のところで『高砂や、この浦舟に帆をあげて』の謡が上手だった。(能「高砂」は何回か見ています。)

「長短」 立川志らく 仲の良い、気の長い男と気の短い男の噺。メリハリがきいてます。気が長くてゆっくり喋るのがホントにおもしろい。特に、気の長い男が、アポロ13号の月面着陸で星条旗がはためくのは空気のない月ではおかしい、というクダリ。実は月に到達しなかったのでは疑惑ってありますよね。次に言う言葉が想像出来て、なお、かつ、楽しくて笑いました。

「親子酒」 立川志らく 酒乱の噺です、と始まりました。志らくで聴くのは2回目ですが、しばらく初めて聴く噺かな?と思っていました。酒乱の父親が、同じく酒乱の息子を禁酒させるため自分も一緒に禁酒の約束をした。息子は家の外に出ることが多いから他の気晴らしもあるが、父親は一家の主として(商家でしょうか)家に居ることばかり。飲みたくてしょうがない。数日は我慢したがもう駄目で、女房に理屈をこねまわして酒をねだる。その理屈。久しぶりに酒が体内に入った時の描写。酒と体の中の人(笑)が抱き合って再会を喜ぶのです。1合だけの約束が、2合、3合と進む時の理屈。やがてべろんべろんになる前の、理路整然としたでもおかしな理屈が志らくらしくてとても良かった。息子が急に帰って来てもばれないよう、酒は湯呑で飲む。お茶だと言えるから。皿の上の羊羹と羊羹の間に辛いもの(塩辛でしたっけ?)を挟んで出すおかみさんも面白い。その辺りで、錦松梅のCMの志ん朝の物真似を入れたり。 https://www.youtube.com/watch?v=pW-ViJkupS0 錦松梅、子供のころ我が家にもありましたよ。ほんの少し入ってた松の実が美味しかったなぁ。で、やっぱりべろんべろんになって帰宅した息子が帰って来て、一般的なオチで終わり。

仲入り

「人情八百屋」 立川志らく やや絞って短めだった気がしました。この噺、10日ほど前に談志百席だったかCDで聴いて泣きました。生で聴いたらきっと泣く。ほら泣いた。泣くと言っても、こみ上げるのとは違って、涙が先に感情を追い越して流れて行きました。泣くとスッキリするから、今泣けると良いなぁと思うけど涙が出ない時もあるのです。人間の体って不思議ですね。

 

5/29 らくご錬金術 よんさん会@レフカダ新宿

5月29日

この会は午後2時開演で、私にとっては頑張って起きないと難しいのです。4週連続3本ネタおろしの会はとっても魅力的ですが、過去2回遅刻してます。すみません。今回は、やっと余裕持って着席しました。

「芝居の喧嘩」 立川志ら乃  
初め、友達同士が会って、一人は相手と一緒に芝居見物に行こうと思っていて、もう一人は相撲見物に行こうとするのです。相撲の話、というか力士の肉体美の話が詳しくておかしかった。結局芝居に行きます。実は1週間前の志らく一門会の落語バトルで、立川らく人がやったのを聴いています。あの日は10分という制限があったのでスッキリしてましたが、今日は、小学生時代の喧嘩の話も途中で入り、みっちりでした。楽しかったです。

「茶金」 立川志ら乃  
後で調べて、上方落語はてなの茶碗」を東京では「茶金」と呼んでいると知りました。これも大熱演。

仲入り

「?」 春風亭昇々 

「金玉医者」 立川志ら乃  
元の小噺から、立川談志(志ら乃の師匠の師匠ですね)が作り上げたような噺だとのこと。これを談志が地方公演にかけると、爆笑ホームランかしーんとなるかに分かれるのを、舞台袖で聴いていた話題も出ました。
この「医者」、というか病人を治すおじさんの、独特の雰囲気、口調を出すのはまだ難しいですね。ただの浮かれたいやらしい感じになりかねない。あるいは同性愛嗜好者の雰囲気かな?それでも、やるという意気込みがすごいなぁ。師匠の志らくは「立川志らく落語大全集」の最終回、2030年秋に「長短」「芝浜」とこれをやる予定なんです。私、その時に行けるかどうかわからないし、生で「金玉医者」を聴くチャンスは滅多にないと思って、少し頑張って行きました。 
そして、自分でもびっくり!医者まがいの男が、病の娘に話す "自分を許さなければ、他人を許せませんぞ" という、名言というか金言というか、に、グサッとやられて涙が出てきたのです。疲れている所為もあるけれど。

10月には、他の落語家が作った新作落語のネタおろしの会をやるそうです。古典落語もやるとのこと。行ってみようかなぁ。

5/22 シネマ落語の会 天国から来たチャンピオン @北沢タウンホール地下一階 小劇場B1

5月22日
志らく一門会スペシャル企画です。この会場で「不幸の家族」を先週観たのですが、舞台の作りが変わってました。向かって右側の小道具が並んでいたスペースも客席にしたのかな?開演前、昼公演が終わって出てきた友人に会え、「良かったね!」と同じ感想持っていて嬉しかった。 
開演前、司会的に前に立った前座さんに芝居を観た人は?と言われて、私の見える範囲ではあまり手があがっていなかったのは意外でした。
昨年までなら、わかる!その気持ち。でも、今年は違いますよ。志らくツイッターで、蜷川幸雄さんの死去と一度役者としてオファーされたが独演会と重なるので事務所が断ってしまったという接点を書き、続けて "蜷川幸雄。どういう経緯で志らくがオファーを受けたのかはわからないが微かに蜷川幸雄と結ばれたのは事実。でも一度も私の芝居にお誘いしなかった。まだそ のレベルではないと思っていたから。今回はお誘い出来ると思います。まだまだではあるが私の気持は伝わるはず。「不幸の家族」明日初日 #蜷川幸雄" と書いています。

一、落語バトル
「権助魚」 立川らくぼ 
「芝居の喧嘩」 立川らく人 
結果的に3位だったんですが、スッキリしていて良かったと思う。
「ずっこけ」 立川志ら乃 
真打です。段違いに良かった。メリハリがきいていて気持ち良い。ちなみに、この噺の初演を5月8日に聴きました。終演後に掲示物を見ると、2位の1.5倍以上の票が入っていて圧勝。

一、「寝床」 立川志らく 
プログラムにはここで2席やるように掲載されてましたが、まさにこの旦那のごとく、タップリ、ぎっしりやったので、これで十分。熱量がすごくて、可笑しくて、楽しい。ガンモドキの製造法とか。 
志らくの落語は逃してはいけないと思い、6月の一門会のチケットを買いました。

仲入り

一、シネマ落語「天国から来たチャンピオン」 立川志らく 
昨年の秋、横浜で聴いた時もおもしろかった。
でも、少し前にDVDで映画を見ておいたので、細部の比較・対応がわかって、もっとおもしろくなった。志らくのこの映画への愛が、映画ファンとは言えない私にも少しわかった気がした。
そして、後半のあたりでグッと来てしまい、最後は泣いた。みなさん笑っていた様子だったけれど。純愛ストーリー。

5/16 不幸の家族@小劇場B1(北沢タウンホール地下)

5月16日に行って来ました。
立川志らく作・演出、下町ダニーローズ第十八回公演の4回目の上演です。(上演日は5/14~5/29) 
昨年の「真景累ヶ淵殺人事件」、率直に言って私はとてもがっかりしたので、今年はどうかな?と思ってました。でも、志らくさんのツイッターなどの発言読んで、心底、観て欲しい!という気持ちが伝わって来たこと、冒頭に伝説の「談志・志ん朝の物真似で『笠碁』」をやること、で、やっぱり志らく好きだから予約して行きました。

直後の私のツイートです。
「私は少数派?全く泣かず。(落語では何度も泣いた事あり)最後のファンタジーに爆笑。場面転換時、役者は無機的に捌け、和装の前座さん達が舞台上の赤い箱を無駄なく時には左右対象に動かす。衣装は赤と対象的な黒シャツ+紋。舞台右手にはあ・う・んの銘の一升瓶等あり。」
「黒シャツのワンポイントに三蓋松(立川流)、古今亭菊志んの裏梅(ですよね?)と、ちゃんと紋になっていた。もう一種類あった気がするが、そこまで視力良くないので不明。衣装担当、酒井莉加、出演せず遺影写真で舞台上に参加。」
「視覚的にとてもスッキリした舞台だと思った。志らくさんの芝居を観るのは三年目。一番良かった。あ、冒頭の「笠碁」本編はもちろん、出囃子を生で初めて見 る事が出来て良かった。前日の?舞台の段差で足の親指骨折した前座さんが笛吹いてた。ヒシギで苦労されてたけど、あれは本職でも外す時は外す。」
「BGMで、日本的な曲と、バロック曲と流していたと思ったけれど、あれは誰の作品なのでしょうか?バロック曲(たぶん)が気になる。我が家のCD棚にあるかも。あと、ここに蛭子さんゲストで入ったらどうなるのか、興味津々。」これに志らくさんが返信ツイートしてくださって、
「私が日本的な曲、と思ったのが映画「暗黒街のふたり」(フィリップ・サルド)のテーマ、アルビノーニオーボエ協奏曲がありましたね。YouTubeでみつけました。」

この記事を公開するのは公演が全部終わってからですので、結末を書きます。
並河虎吉(モロ師岡)の3回忌。ぜんじろう演じる喬(たかし)(落語家。芸名は朝寝坊露志庵あさねぼうろしあん)が、飲み屋の客に扮してずっと観察していた権力側によって第3次世界大戦に召集されて行きます。既に徴兵制が確立されていて、政府に不平不満を持つ人間は最前線にやられる。…これで終わるかと思いきや!すぐに飲み屋の店主たちによって喬が連れ戻されます。彼等は実は伊賀流忍者の末裔で、喬は服部半蔵の子孫だというのです。服部半蔵の家系を断絶させる訳にはいかない。戦争に行かず、誰も探し出せない青木ヶ原の樹海(そこには1,000人くらい暮らしている)に身を隠そう! 
これに、大爆笑しました。まさに、落語だ。志らくが言っていたのはこういうことか。とても腑に落ちました。

※5月30日追記 「再演」という言葉がネットに上がっています。どうなるのでしょ?そして、8月には志らくの一人芝居「不幸の伊三郎」が上演されます。こちらは「不幸の家族」上演中にチラシ配布されていました。

キャスト:モロ師岡立川志らくぜんじろう、松元千秋、原武昭彦、古今亭菊志ん、「セツ子」はダブルキャストで奥村香里&田中絵梨、幸田友見、小林英樹、長谷川奈緒美、松尾マリヲ、上野G~

スタッフ:
作、演出 立川志らく 
舞台監督 亘理千草 
照明 鈴木章夫・伊藤ハナ 
音響 吉田望(ORANGE COYOTE) 
大道具 上野G~ 
撮影協力 テレコムスタッフ(株) 齋藤使恩 
スーパーアドバイザー 元祖爆笑王 
協力 (株)ワタナベエンターテインメント

 

 

5/15 らくご錬金術 よんさん会@レフカダ新宿

5月15日

先週おもしろかったので、また行ってみました。大爆笑したのでも、ボロボロ泣いたのでもなく、「ああ、必死にやってるなぁ」と思っただけでもなく、とても好感が持てる噺でした。いい具合に(強過ぎず弱過ぎず) 気力が伝わってくる。

六尺棒」「大山詣り」「夢の酒」 立川志ら乃

ゲスト;瀧川鯉八 「?」 新作落語で、流れ板の清二が飛び降り自殺を止める噺。独特ですが、私の好みではないなぁ。

5/8 らくご錬金術 よんさん会@レフカダ新宿

5月8日

初めて行ってみました。  らくご錬金術の副題は【立川志ら乃 創作落語ネタ下ろしの会@レフカダ新宿】ですが、5月は怒涛の4週連続3席古典落語ネタ下ろし、だそうです。  私は古典落語の方が好きなので、この機会にと思って。なのにすみません、遅刻したので一席目は終盤から聴きました。

「ずっこけ」  立川志ら乃   すっかり酔っ払った男が、塀の外側は皆んなのものだ!と用を足すあたりから。

口調に勢いがあって下品に(あまり)ならないところが好きです。森下仁丹の広告の絵、充分わかりますよ。でも20代の若者は知らないのかな。

ネタ下ろしとはその落語家にとっての初演ということですよね。確かに毎週3席、計12席を仕上げるのは大変でしょう。この方には、追い込まれて発揮する力があるのだと思う。まだ1週目ですが。

「蛙茶番」(かわずちゃばん)    立川志ら乃     素人芝居を題材にした噺です。おもしろかったけど、シモネタのところは余りケラケラ笑ってもなぁ、と控え目に笑いました。箸が転げても可笑しい年齢ではないので。

中入り

「  ?   」  昔昔亭A太郎(せきせきていえーたろう)    新作落語。こういう感じが現代の若者に受ける笑いなのかも。

「夢金」    立川志ら乃    タイトルそのものがオチをあらわしている古典落語で、最後はわかっているけどおもしろかった。フライヤーに「攻めの初夏!」と載っていました。まさに攻めてます。

5/2 第三回「新・志らく百席」@横浜にぎわい座

5月2日

開口一番 「千早ふる」 立川志ら鈴 このタイトルは今、コミック、アニメ映画上映と話題になっているし、元々とても有名な噺ですね。 私は最初に百人一首の歌として知ったので、「ちはやぶる」と読みたくなります。 そして、"知ったかぶり"がテーマなので、事前発表されている志らくの「手紙無筆」と被る。似た感じになってしまうので、避けるべきなのに…と、後で志らくが言ってました。まぁ、仕方ない。噺の流れは良い感じで行って、37歳から前座で云々とご自分のことをチラッと言ったところが一番おもしろかった。でも、竜田川は力士なのに、竜田太夫と最後まで言っていたのは残念。というか、不思議でした。気付いていたのかどうか。竜田太夫という言い方もアリなのでしょうか?

「手紙無筆」 立川志らく という訳で、続いて、字が読めないのに読める!と言い張ってむちゃくちゃを言う男の噺。発信側と受信側、あとは会場やら何やらの全体が絡み合ったのか、とても充実してました。次の噺も良かったので、休憩時間に6月のチケット買いに走ったくらい(笑) 読めないのに読める言い訳で、俺は鳥目だ、今は昼です、みみずくの鳥目だ、がヒット!でしたね。最後には手紙取り上げて、めぇ~と鳴きながら呑み込んでしまう。素晴らしい。

「小言幸兵衛」 立川志らく この噺は志らくさんで聴くのは2回目。1回目は、なんだか理屈っぽくてつまらないなぁと思った記憶があり。でも今夜は、幸兵衛(長屋の大家)の妄想炸裂が私の波長に合いました。この長屋に仕立て屋一家が引っ越してくると、向かいの古着屋のひとり娘と心中騒動になるからだめだ、と。飛び込む直前の金光教のお祈りの歌、志らくさん得意です。 ところで仕立て屋の息子の名前が「ぷよ」。赤ん坊の時ぷよぷよしてて可愛かったから。じゃあ、「ぷに」でも良いってことだよな…と私の妄想もふくらみました。(ぷに、といえば水野由結ちゃん。) 「逃~げ~たぁ」で始まる浪曲子守唄、もしかして知らないだろう若い人々も客席にいました。(チケット完売)

中入り

井戸の茶碗」 立川志らく これも志らくさんで2回目。正直者が三人そろうと大変になるという噺。貧乏とか、武士の意地とか、親子の情とかが絡むのですが、泣く噺ではなかった。(私は時と場合によってよく泣きます。)説教くさくならない。で、そうだなぁと腑に落ちて、笑うところが沢山あって、本当に楽しかった。勢いがありつつ、クレイジーではなくておもしろい。こういう志らくも良い。 談志と志ん朝の物まねで「笠碁」を下北沢でやります(元は、談志が機嫌損ねて独演会に1時間半遅刻(駅まで来て怒って帰った)、志らくは開口一番で15分「抜け雀」のあと4席目に上がったらお客が怒り出してその場で演じたそうです。)(下町ダニーローズ第18回公演(5/14~5/29)のことですね。)、新しくCD作りました、サインします等の宣伝コーナーを冒頭にやって良い雰囲気でした。終わってからやるより、この順番が良いと思う。 

4/24 第三十二回 鎌倉はなし会 立川志らく独演会@鎌倉芸術館

4月24日

開口一番   「権助魚」  立川志ら鈴

 

源平盛衰記」     立川志らく

ストーリーは進みつつ、脱線しても、また戻るところが素晴らしい!師匠談志、高座で、弁慶が牛若丸に「3分28秒テクニカルノックアウト!」と語ったけれど、ボクシングは1ラウンド3分なので間違えてます云々という話がありましたが、昭和43年2月の「第26回ひとり会」の録音に確かにそう入ってますね。(立川談志「ひとり会」落語CD全集/第十集を聴いていて発見。) 熊谷直実平敦盛のくだり、"カマを掘る"の意味を知らないお客さんもいたのかも?私は(現場は知りませんが(笑))知ってますよ。

中入り

 

「紺屋高尾」    立川志らく  前半、言い回しを省いたところが幾つかあったのは、高尾が紺屋の女房になってからをじっくり語りたかったのか。     かなり頻繁に笑いどころがありつつ、最後のシーンでは、やっぱり泣きました。いくら軽石で擦っても、爪の中の青い色が消えなくなって嬉しい、と高尾が言うんです。

二つとも志らくさんで聴いたことのある噺だったけれど、何回聴いても良いものは良い。

横浜ベイスターズの悪口をラジオで言った顚末、面白かった。それを大船で言う志らくは度胸あるね。

 

4/19 立川志らく落語大全集~クレージー落語特集~@国立演芸場

4月19日

開口一番 「世界の終わり」 立川がじら この秋に二つ目昇進披露会をやって、そこでO.Kもらえたら、二つ目昇進が本決定だそうです。創作噺。どうやってこの噺終わるのか?と思ったら…ズッコケました。

「目薬・義眼」 立川志らく 志らくさんの会にはA41枚くらいのリーフレット(今考えていることとか解説とかが載っている)が配布されることが多くて、それを読むの好きです。この二つの噺については、落語の中で二位三位を争うくだらない噺と書いてありました。ちなみに一位は「金玉医者」。 高座ではまず、熊本地震の話題に触れ、さらに2011年の大震災後の"自粛"ムードのなかで3月に予定通り独演会をやったら、客席は半分くらい埋まった。笑っている観客の中にクドカンがいて、こういう時にも人々は笑いを欲しているのだ!と思って、出来たのがドラマ「あまちゃん」とのこと。 二つ連続してやりました。「目薬」でおかみさんのお尻撫でまわすところ、可笑しかった。「義眼」で、医者が目玉をくり抜く時に麻酔しなくてもこの歌を聞けば痛くありませんから、と歌ったのが「どれみふぁそーらふぁ み れ ど」でした。意外な歌が出てきて痛くないでしょ、と。ヤマハ音楽教室ですね。

「転宅」 立川志らく 間抜けな泥棒の噺。ネタおろしだそうです。泥棒に入った先がお妾の家。実は自分も元は泥棒、今の旦那は嫌、あんたのような男らしい泥棒と夫婦になりたい、浮気しちゃだめだからと財布取られ(預かっておくと言われ)て帰る。翌日行くと、誰もいない様子。向かいの家の人に聞くと、引越して行ったよ、今に騙された男がやって来るから、町内でそいつを見てやろうと集まって覗き見している…、と事の顛末を聞かされる。2階に用心棒がいるから静かにしてと脅された話をすると、「よく見ろ、あの家は平屋だ」。その女は元は旅の義太夫語りだった。 楽しく笑いましたが、お腹が痛くなるほどは笑わなかった。

中入り

「鉄拐」(てっかい) 立川志らく (鉄拐の拐は、誘拐の拐で、手偏なんだけどなぁ、木偏になってる印刷物もありました。)(細かくてヤな奴だね。) 中国を舞台にした落語はこれだけだそうです。でも、登場する人間の名前は日本人の名前。不思議です。 上海の大店の創立記念宴席の出し物の大トリを探せと命じられた番頭が、仙境から八仙人の一人、鉄拐を連れてくる。ところで八仙人が「八千人」に聞こえたのですが、それが本来のイントネーションなのかな。たとえば「東海道」も、JR東海道新幹線の車内アナウンスが現代では多数派だけど、談志も志らくも頭を強く言う。「東海道五十三次」とつながると、よりカッコいい、あのイントネーションね。 それは、こっちへ置いといて、この噺、結構長くてストーリーもやや複雑。宴席での出し物や仙術は奇想天外。蛇を呑むカエルとか、人魚の踊り食いとか。鉄拐は、膨れた腹をなでると中からもう一人の小振りな鉄拐を出すことが出来る。出てくる時に、痩せこけた顔が赤くなり、顎がはずれ、喉の奥から手が出て、頭が出てという描写はリアルだった。合間、合間に小さい鳥が落ちました、コトリ。とか、鳩が何か落としました、ふーん(糞)とかのギャグがある。上海の寄席に出ることになり、10日連続興業では客が飽きて落ち目になり、また別の「張果老」(ちょうかろう)という仙人が連れられてくる。(このあたり、落語ファンしかわからないような言葉や言い回しが沢山だったかも。)この仙人は瓢箪から本物の馬を出すことが出来る。が、鉄拐がこっそりその馬を瓢箪から吸い出してしまい、張果老は何も出せなくなる。一方、鉄拐は馬を吸い込んだ為に詰まってもう一人の鉄拐を出せなくなる。では、代わりにお客を吸い込むことにするとこれが受ける。(そのお客たちをどうやって出すのかは触れず。)ある時、ずいぶん腹の中で暴れる客がいて苦しい。見ると「俺の馬を返せ!」と張果老が中に入っていた、でいったん終わり。大作です。これをやる人はあまりいない。生でもう二度と聴くことないかもしれません。 リーフレットに鉄拐仙人の存在感では、自分は師匠・談志に負けると書いてあったけれど、たぶんそうでしょうね。私は録音でしか談志の鉄拐を聴いていないけれど。談志のサゲは、李白陶淵明が入ってた、です。大酒呑みの中国の詩人の名前、もう身近ではないですね。 あれ?志らくが3曲歌ったのはどのあたりだったか、わからなくなりました。まず、美空ひばり「悲しい酒」のメロディで歌詞がどんぐりころころ、さだまさし防人の詩」のメロディで、まず寿限無、そして芝浜。そうか、鉄拐が寄席に出始めて、弟子志願者が来るあたりだ。 落語が終わってからも緞帳はおりず、談志のサゲの話と、5月の下町ダニーローズ『不幸の家族』の宣伝もありました。