落語を聴いた日

ナマで落語を聴いた日の覚書と、落語に関係するあれこれについて書きます。

12/21 立川流 孫弟子の会 「立川流が好きっ!!」@深川江戸資料館小劇場

私は立川流は「まぁ、好き」なんです。談志は大好きです。立川流の落語家の噺を聴いて、つまらないなぁと思ったことあります。他の流派は高座では殆ど聴いたことありません。CDでは聴きます。 また、落語界の仕組みにあまり関心はないです。能・狂言文楽などの古典芸能にも興味があるし、見に行きます。 でも、落語そのものは好きですね。落語を聴く様になって、生きるのがラクになった。

一、「真田小僧」 立川こはる 談春一門の二つ目さん。女性です。いつか聴いてみたいと思っていた人。というのも、2014年9月に談春独演会に初めて行った時、(弟子に厳しいという評判は聞いてましたが)「弟子は一人もいなくなった」と、開口一番から全部談春。めくり自体なかったし、高座返しも確かしなかった。でも、談春一門のこはる、の名前はネット上で見かけるし、フライヤーも出てる。厳しいなかでも、続けているこの人はどんな噺をするのか。父親の低音の声がビシッとキマっている一方、こまっしゃくれた息子のハジケっぷりが底抜けに明るい。息子が講談風に話すところは、見事。カッコ良かった。メリハリがきいている。さすが! うーん、もう一人の女性落語家で真田小僧聴いたことありますが、ハッキリ差がわかりました。

一、「人間っていいな」 立川志の太郎 志の輔門下の二つ目さん。出囃子が「にんげんっていいな」(まんが日本昔話のエンディング曲)でした、よね? これは新作落語で、人工知能により、入門から3日で真打昇進のロボット落語家が登場する噺。構成が緻密で実におもしろい。本編の前のマクラで、自分が落語家になってから家元・立川談志に会った時の思い出話。談志・生志親子会に前座として付き人になり、博多へ。帰路、フライトの待ち時間に、志の太郎の師匠が志の輔ではなく志らくだと勘違いした家元、いろんなエピソードを語る。(具体的な話は無し)「え?師匠(志の輔)ってそういう面があるんだ…」と驚いているうち、だんだん誤解だとわかり生志が訂正したそうです。そして家元は「鱒寿司は、うめぇな」と言ったそうです。爆笑。

一、「天災」 立川談吉 談志の最後の弟子ですが、没後は左談次門下へ移った二つ目さん。みっちり、たっぷり面白かったけれど、この会の時間配分としては長かったと思う。最後の志ら乃が高座に上がった時、ステージ右のデジタル時計が20時53分でしたから。

仲入り

一、「一人相撲」 立川吉笑 この企画の発起人で事務局的な立場にあるのがこの人のようです。談笑門下の二つ目さん。新作落語。さすがに、3ヶ月連続して同じ人の同じ噺を聴くと、新鮮な面白さは減少してしまいました。

一、「庭蟹」(にわかに) 立川寸志 44歳で談四楼に入門した二つ目さん。さらりとこの噺をやったのは人生経験の差か、出演者同士の話し合いでの判断か。はじめ、ん?洒落小町…いやいや違うぞ、主人と番頭の噺だから、なんだろう?初めて聴く噺でした。頭の固い主人が番頭に洒落を言ってくれと頼むが、洒落が全くわからないという筋。きっちり、すっきりでした。良かった。

一、「粗忽長屋」 立川志ら乃 志らく門下の真打です。談志の孫弟子で最初に真打昇進した人。ほぼマクラなしで、粗忽長屋とタイトルも告げて始まりました。私はこの人の迫力、熱量の大きさが好き。その一方で、力を抜くところは抜く。先月も同じ噺を聴いたけれど、少し足した部分もあり、おもしろかった。約17分。最後のお辞儀が実に綺麗でした。1月の志らく志ら乃親子会のチケット購入しました。

12/1 写噺 SHABANASHI @国際連合大学・エリザベス・ローズ国際会議場

しゃばなし、と読みます。志らくさんのツイートで知って応募し、行って来ました。

主催は画像、動画を扱っているGetty Images という会社で、今年初めて、写真×落語、のイベントを開催。二人の落語家が、Getty Imagesの選んだ2016年を象徴する報道写真の中から一枚選び、それに関連した噺を一席ずつ語ります。

白酒さんも言ってましたが、国連大学の中に入るだけで、なんだか嬉しい。受付で言われた通り、外から見えるところに渡されたシール貼りましたよ。これで「危険人物」じゃないとわかる仕組みなのでしょう。エレベーターの音声は英語でした。会議場の正面に舞台を作り、高座になってました。ちょっと驚いたのは、一般客の他に報道関係者が大勢招待されていたこと。これ、普通の興行ではなかったようです。入場無料でカレンダーと手拭いのお土産までいただきました。

一、オープニング  司会者のフリーアナウンサーさんは着物姿。社長さん(女性)が会社と今日のイベントの説明。NTTの専門の人も登壇して人工知能が写真を選ぶ話もありました。

一、「松曳き」  桃月庵白酒  この方は初めて聴きました。ところどころに、独自のギャグを入れ、大筋スタンダードだけどおもしろかった。彼が選んだ一枚は、EUサミットでメルケル首相(独)、キャメロン首相(英)、オランド大統領(仏)が討論している写真。噺のあいだ、パネルが傍に展示されてました。

仲入り

一、「子別れ」  立川志らく  約1ヶ月前の赤坂寄席でも同じ演目でした。何回聴いても涙が出るなぁ。夫婦、親子の情愛。それを横から見て感動する八百屋を登場させるバランス感は志らくならでは。メリハリもあって良かった。聴いている人々が、落語になじみがない層が多いと判断した為か、玄能を金槌と言ったところが1回だけありました。今調べたら、玄能の方が金槌より小さい道具のようです。志らくさんは、熊本地震で崩壊した家の前で、オモチャを持って微笑む男の子の写真を選んでました。壊れた家の中からお気に入りのオモチャが壊れず見つかって嬉しい…と想像させる一枚。(実際そうなのかは、わかりません。)

一、アフタートーク   司会者と落語家二人でトーク。写真を選んだ理由、写真と噺の関連、今日のイベントの感想など。志らくさんは、こどもには強さ、純粋さがあること、大人がしっかり見なくちゃいけないと話し、白酒さんに「マジメなこと言い過ぎたかな?」と話し掛けてました。照れ、というか、バランス感覚というか。子育て真っ最中ってことも関係あると思った。テレビの規制の話題にもなり、司会者が元の所属局名も出して話していたのが痛快でした。

 

※こちらに動画が公開されています。

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11/21 談志まつり 2016-立川談志生誕80年記念公演ー(2日目)@よみうりホール

談志まつりに行って来ました。チケットが取れたのは、2日目のみ。でも、命日は21日だし、良いのです。

【昼の部】

一、「権兵衛狸」 立川談吉 狸は体のどこを使って「ごんべ、ドンドン」と戸を叩くか、実演するのを初めて見ました。後頭部で叩く。だからガラッと戸を開けられるとひっくり返る。

一、「尻餅」 立川小談志

一、「反対」 立川キウイ 芸の足りない分、体張ってます、と高座をおりてよみうりホールの2階席を1周してました。

一、「手水廻し」(ちょうずまわし) 立川雲水 "立川流の最底辺と最高峰の間に挟まれて"の出番だとマクラで言ってました。知ったかぶりの噺。雲水さんは関西言葉です。いつも手堅くおもしろくて、聴いていて気持ちが良い。

一、「みどりの窓口」 立川志の輔 生で初めて聴きました。マクラのあたりはボソボソとくたびれた感じから入るのですが、本編に入ると圧倒的におもしろい。構成がきっちりしているなぁ、と思いつつ、全くそれが嫌らしくならない。さすがです。

仲入り

一、立川談志生誕80年記念座談会 最初と最後に談志の録音(与太郎論、と孝行糖)を流して、中間は立川流の全出演者から一言ずつ。

一、「短命」 立川龍志 

一、ヴァイオリン漫談 マグナム小林 十数年前に談志に破門され、この道に入った方。この楽器でいろんな音を出す奏者の演奏はよく聴くのですが、相撲の呼び出しと行司の声は初めて聴きました。♪ラメチャンたらぎっちょんちょんでパイのパイのパイ♪(東京節)とのんき節の時は、ボディを顎で挟まず、胸のあたりに当てていました。後半はタップシューズ履いて、弾きながらタップ踏んでクラシックの有名曲「ラデツキー行進曲」(お客の手拍子に強弱の指示して)と「天国と地獄」!楽しかった。

一、「阿武松」 立川左談次

 

【夜の部】

一、「一眼国」 立川談修

一、「唖(おし)の釣り」 立川談慶

一、「イラサリマケー」 立川談笑 新宿アルタで同じ演者同じ演目で聴いたのは、今年3月。その時は、何だか日本で働く外国人を小馬鹿にしてる印象が強かったけれど、今回は大爆笑でした。ややアウェイな会場でやっているのが、返ってプラスになったのか。カタコトの日本語が何を指しているのか、とか、活きの良い魚が、悲しく死んだ魚、と表現されるのが単純におもしろかった。両隣の席の見知らぬ若い男性(学生さん?)が、ビルマ→水島のくだりで笑ってました。

一、「洒落小町」 立川志らく ♪のんきなブーちゃん♪ は、私は知らないのですが、懐メロらしい。良い声だ。志らくのスカッとしている噺、大好きです。それに、リズムが良い。他の演者がつまづいたり、重すぎたりするので、逆にそれがハッキリ分かりました。

仲入り

一、立川談志生誕80年記念座談会 談志の録音は昼の部と同じ。テーマは立川流の今後について。志らくが挙手して「流れ解散!」と言ったのが印象的でした。後は思い出話。談笑は時期的な理由で談志とじかに接することが殆どなかったそうです。

一、「黄金餅」 立川ぜん馬 自らの食道ガンの話から黄金餅へ。談志の晩年の録音で声が掠れているのを聴いたことあります。同じなのですが、生だからよけいに気の毒でした。率直に言うと、聴き辛い。

一、スタンダップコメディ 松元ヒロ テレビでは聴けない皇室ネタたっぷり。さすがヒロさん。談志に可愛がられたから、ここに入っているんですよね。でも後半は永六輔追悼の話になっちゃってました。

一、「禁酒番屋」 土橋亭里う馬(どきょうてい・りゅうば) 言葉と言葉の間が長くて、妙に重かった。で、さらっとやれば感じなかったであろう「キタナイなぁ」という感想です。

 

11/17 立川流広小路亭寄席 (昼席)@上野広小路亭

11月17日

志ら乃さんが代演で出る、というツイートを見て行って来ました。一日で10人以上の噺を聴いたのは初めてです。

一、前座 二人目の途中で席に着いたので、すみませんうろ覚えで、確か、志ら松さんだったと思います。演目は、「元犬」。

一、「看板のピン」 立川寸志

一、「天狗裁き」 立川笑二

一、「一人相撲」 立川吉笑 先月も聴きましたが、この人の噺は光ってた。

一、「権助魚」 立川志ら玉

一、「粗忽長屋」 立川志ら乃 元はここに龍志さんが出る予定が、トリのぜん馬さん休演で龍志さんがトリ、空いたところへ志ら乃さんが代演。 マクラで、ギャラを振り込んでもらう為に銀行口座を作ろうとしたら本人確認が必要であちこち回され、結局同居の女性(内縁でも6ヶ月以上なら可)のおかげで確認出来たとのこと。で、粗忽長屋に持って行くのは良い感じでした。私は熱量が高い志ら乃が好きなのですが、時に上がり放しになることもある。程よくコントロールしていて、この日一番良かったのはここ!

仲入り

一、「転失気」 立川らく兵 しったかぶりの噺。テンポよくて良かった。

一、「ろくろ首」 立川志のぽん 

一、「山号寺号」 立川左平次 軽い噺で良いのかもしれませんが、私はもうちょっとメリハリが欲しいな。

一、「松竹梅」 立川志らら 普通におもしろかった。

一、「文七元結」 立川龍志 うーん。私は志らくの文七の方が100倍好きだな。

11/5 赤坂寄席vol.4 「本日、ふたりで」 @豊川稲荷東京別院

11月5日

立川志らく&相島一之」の二人会の2日目にして千秋楽に行って来ました。前回までは赤坂レッドシアターでの開催でしたが、今年は会場が確保出来ずこの会場になったとのこと。ご本尊様と同じ高さに赤い布で覆われた高座があり、その前には賽銭箱。開演前に硬貨投げて拝んでいる人もいました。びっくり。信仰心が篤いのかな。客席は座敷に椅子でフラットでしたが、高座が高いので演者はよく見えました。

まずお二人登場し、挨拶と簡単に今までの経緯説明。

一、「一人長屋」 相島一之(あいじま かずゆき)  脚本家の鈴木聡さんが書いた新作落語。これまでは「一人称落語」をやっていたけれど、今回初めて登場人物の複数いる落語に挑戦!だそうです。この人は俳優さんです。(後日、映画「12人の優しい日本人」のDVD借りて見ました。面白かったです。) 落語は、複数の人物が混同しないよう、頑張って "かみ・しも" を間違えず奮闘されてました。自分で眼鏡飛ばすほどに。高座の上に座布団がないなぁ…と思ってましたが、彼は高座を椅子のように腰かけて話すスタイルでした。ちょっと理屈ぽいけれど、楽しかった。

休憩

一、「子別れ」 立川志らく 座布団が出て、仏様と同じ高さに座り、マクラ無しで噺に入りました。これは泣きますよ。亀坊は口が達者で、ちょっと生意気なところもある子だけど、言っていることは正直。普通にやってもジンと来る噺ですが、志らくの噺には通りすがりの八百屋が登場して、もう一つの目で情景を語る。これがおもしろい。吉原の帰り、吞んだくれて花魁ののろけまで言い、怒る女房に暴力をふるい、離縁状(三行半に一行おまけして四行半)を書き、女房子供に逃げられる熊五郎。彼が改心して酒を断ち、3年後、亀坊と再会するシーン…の脇に八百屋がいて見てるのです。「良いお話ですねぇ。商売もんの茄子ですが、どうぞ」。翌日、約束通りうなぎ屋の二階に亀坊が来る。後から気になって来てしまった女房とヨリを戻すシーンにも遅い昼飯をとる八百屋。泣きながら笑い、笑いながら泣きました。

一、トーク 「男はつらいよ」のテーマソングでお二人が登場。特に関係は無いのです、と言いつつも、志らく山田洋次監督が認めた「寅さん博士」ですから、映画のマニアックな話題あり。 ( 第〇作で電車が発車するシーンに、撮影だと察知し喜ぶ乗客が一瞬映っている、等) 相島さんは俳優として渥美清のすごさを語っていました。初期の作品でとらやの二階に上がる時に、3段階で見事にコケている話とか。途中から作者の鈴木聡さんも交えて、3人でトークでした。落語と芝居の違い。落語はリズムとメロディ、ここぞというところは感情を込めるが、それ以外は冷静に状況を見ながら鼻唄を唄っているようなもの。芝居は、演出家の意を受けて、その一人の人物になりきる。志らくさんも「芝居のマネゴトしてます」と芝居の話になり、他人にあれこれ言われるのが嫌だから、自分の劇団でやっている。故・蜷川幸雄氏からオファーが一度来たけれど、偶々先約があって断った話。「何も言いませんから、出てくださいよ」と言われてましたが、どうでしょう。

10/23 「新宿レフカダ」プレゼンツ 迷宮落語会 新作横盗り@新宿レフカダ

10月23日

10月は立川志ら乃の新作横盗り月間。2週目の林家彦いちを避けた訳ではありませんが、吉笑の回に行って来ました。

一、「真田小僧」 立川志ら乃 マクラが長くて、真田小僧の前半、という感じでした。本日のメインである立川吉笑の新作「何時材」(いつざい)を演じる為、構成を考えいくつかの"沼"にはまって夜が明けたのでは? 少々異様でしたが、とても楽しかった。

一、「一人相撲」 立川吉笑 初めて聴きました。1984年生まれ。マクラは標準語で、本編は関西言葉になるんですね、この方。おもしろかった。

中入

一、「何時材」 立川志ら乃 このあとのトークで、吉笑さんは自分の台本通りにやってどうなるか聴きたかったようですが、志ら乃はそうはせず、足したり引いたりして作り上げてました。私は元の噺を聴いたことはありません。「〇〇年にひとりの逸材」という言い回しをキーワードに展開していきます。聴きごたえタップリでした。でも、残念ながら(おそらくギリギリまで考え抜いたのでしょうけれど…)、オチはあまりおもしろくなかったな。

一、横盗りトーク 志ら乃、吉笑  このお二人は10歳違い。吉笑さん、タダモノではない雰囲気で、変な遠慮なしのトークが興味深かった。鋭い感覚の志ら乃と、理論派だが技術はまだ追いつかない吉笑。  志ら乃さん、人の新作落語をやるのは予想以上のことだったそうです。「沼にはまる」、つまり考えが袋小路に入って抜け出られなくなるということでしょうか。5月に4週連続3作古典ネタおろしの会をやって、本当に大変で、そのあともテンションがおかしくなった。それで10月は週に1作ずつ、2週やって1週は休み、残り2週というプログラムにしたけれど…という話。いわゆる、古典派、新作派の話題や、(家元・立川談志亡き後の)立川流について、孫弟子世代の動きの話題、志ら乃のところに来た弟子志願者のトンデモ話など。私は古典愛好者ですが、新作も否定はしません。ただ、テレビ受けするだけの笑いや、卑猥な笑いは好きじゃないです。

10/19 立川志らく落語大全集〜志らく十八番の巻〜@国立演芸場

10月19日

開口一番    「安兵衛狐」  立川志ら門

「看板のピン」  立川志らく    まくらで、やたらクレームの多い世の中を嘆く志らくさん。テレビのコメンテーターを毎日やって、ツイッターやって、月2回ニコ生やって、現代日本のやり場のないイライラのとばっちりを浴びることも多いでしょうね。ネットはおそろしい。そんな事でどうにかなる人ではないけれど、無駄な時間とエネルギーが勿体ないと思う。「ふざけるな!」とよく言われるが、自分はふざけてるんですよ、と。テレビでは言えない、命がけのおふざけ、私はそうだよなと思った。噺は安定のおもしろさ。

時そば」  立川志らく    一番楽しく、さすが!と思ったのは、超有名な例の十六文数える途中で時を聞いて一文ゴマかす部分を言い間違えたところ。そして、その間違いそのものもネタにして、より楽しくやり直したこと。かつて生放送で、しかもNHKが集めたお客さん( そもそもを知らない率が高い)の前で同じ間違いをやってしまい、トラウマのようになっていると、中入り後の噺のまくらで言ってました。フロイト流にとらえると、無意識がそうさせたのだ、と言えないことも無いですね。蕎麦を食べる所作では、自分も中途半端だと言ってらしたけど、何が正しいのか?私は気になりませんでしたが。映画「銀座カンカン娘」で、志ん生が扇子を逆に持って蕎麦食べているとのこと。私、この映画は見てます。「疝気の虫」を家で稽古するシーンかなぁ?

中入り

文七元結」  立川志らく  落語大全集では、必ずプログラムに志らくが文章を載せています。これを読むのはいつも楽しみです。この噺に関しては、難しい噺だから飽きてはいるが飽きている余裕がない噺、と書かれていました。私は毎回泣いてしまいます。今回は、前回と全く同じところで涙が…。死んではダメだ、生きていれば花も咲き、鳥もさえずる、云々というところ。ストーリーとしては笑うところでしょう。回りの人々は笑ってました。最後に家族が嬉し泣きして抱きあう、それを見て長屋の住人達は、外見のアンバランスに気が違ったと思う、っていうところも好きです。

10/11 シネマ落語の会 エデンの東@渋谷区立文化総合センター大和田 伝承ホール

10月11日

一、落語バトル

「桃太郎」  立川うおるたー    普通に楽しかった。

「堪忍袋」  立川志獅丸    おもしろかった。手ぬぐい(=堪忍袋)に向かって叫ぶのが、ちょっと聞き取りにくかった。

「替わり目」  立川志らら    この"下克上バトル"は、前座、二つ目、真打の順番で10分ずつやるのですが、たいてい押してしまい、最後の真打は時間が短くなりがち。そんな話を交えてから、ここぞという所を押さえていて、私はこの人に一票入れました。終演後の掲示では、2位の志獅丸の3倍以上の得票でトップでした。

一、「欠伸指南」    立川志らく    *それにしてもこの会は、ほぼ立川志らく独演会なのに満席にならない不思議な会です。一門会という3文字がタイトルにあると敬遠されるのか?19日の「大全集」なんて、プレイガイド系は瞬殺ですよ。志らくさんが言うようにマニアックという事もないと思うし、イープラスでも買えるから、志らくが聴きたい人は気軽に来れば良いのにね。

テレビでこの噺をやった時のエピソード (時間厳守の世界。何度も出されると落ち着かないので一度だけ出す事になっていた「あと3分です」のペーパーを、あと30秒、のタイミングで出された。つまり、速くやっていた。)をマクラに、本編へ。志らくは嫌らしくない擬音や仕草の天才だと思いますが、今夜の「オホホイ」は良かったな。私、前夜は別種のライヴに行ってまして、とてもショックな発表があり、声出して笑って志らくさんに助けてもらった。ただおかしい、というか、思い詰めても仕方ないこともあるさ!という心境にちょっとなりました。

一、「三枚起請」    立川志らく    吉原の花魁に「年が明けたら夫婦になる」と証文をもらった三人の男の噺。彼らが、後半の「エデンの東」に登場します。

仲入り

一、シネマ落語「エデンの東」    立川志らく    映画をDVDで見て予習したのが、2日前。今回はちょっと、映画の主人公のイメージが強く残っていて、え?と思った。ジェームズ・ディーン演じるあの暗いキャルが、幇間になって人気が出るような陽気な男になっていたので。でも、「目は笑ってない」と彼を理解する人の言葉で表現されていた。親子の愛憎というテーマは、まさに私の人生と似ているのだけど、志らくさんは楽しくスリリングな噺にしていたように思いました。キャルの兄貴は狂って、舟の上で「夏の欠伸」やってましたよ。タイミングとしては私には有難いです。ストーリーとしては、別の話かなとも思う。浅い見方かもしれないけれど。

 

10/2 「新宿レフカダ」プレゼンツ 迷宮落語会 新作横盗り@新宿レフカダ

10月2日

5月に「らくご錬金術 よんさん会」があり、10月には"人の新作をやる会"がありますと告知され、どんなのかなぁと思って行って来ました。

一、「長短」 立川志ら乃 まずは、古典落語。マクラの方が長かった、たぶん。爆笑問題のラジオ番組に出演した時に、事前打ち合わせの"イケメン落語家ブーム到来"ではなく"高橋維新"の話題で切り込んだアレコレ。志ら乃の師匠である立川志らくが、高橋維新のことツイートしているのをチラッと読んでいたので、特に面白かった。 「長短」は、気の長い男と気の短い男が登場人物なのですが、長さんのゆーっくりしゃべるリズムが、志ら乃はまだ速いな。短気な私でも待ち切れる。

一、「寝床」 立川談吉 本日、新作を横盗りされるのがこの方。高座聴いたのは初めてです。立川談志最後の弟子であり、談志亡き後、立川左談次門下に移ったと公式サイトに載ってました。二つ目さんです。志ら乃が長くやったあとだし、今日のメインはこの後だから…と思ったけれど、普通の長さで普通に寝床やってました。

中入り

一、新作横盗り落語 (題名未定) 立川志ら乃 元は談吉の「シロサイ」です。動物の白いサイ。"正確に言うと、「談吉がシロサイを作った時の着眼点」を、横盗りました。"ということだそうです。そもそも"シロサイ"を知りません。で、志ら乃のこの噺にはサイは登場しません。私は新作落語は敬遠する方ですが、これはおもしろかった。

一、横盗りトーク 談吉・志ら乃 シロサイ、から、今やった志ら乃の噺がどう生まれて行ったのか、その過程を聴くのはおもしろかった。

8/29 志らくひとり芝居 『不幸の伊三郎』@シアター711

初日を見ました。パンパンの満席でした。(小さな小屋です。)
とても面白かった。
一番私のツボにはまったのは、息子たかしの夏休みの読書感想文が「痴人の愛」についてだったこと。おませな小学生だ。
その他、次から次へとシチュエーションが可笑しいのと、言葉のギャグと、沢山。

でも、私は落語の志らくの方が好きだな。

今年5月に上演された『不幸の家族』の19年前である2006年という時代設定及び伊三郎の年齢設定と、芝居の内容にどうも隔たりを感じてしまった。
つまり、小学生の子がいる年代の父親が、あんなにあれこれ妻に言うかな?という違和感。自分が使うものなのに「○○を持って来なさい」と言ったりする。こんな親父、落語の国にはいても、現実にはあまりいないのでは。
(だから、これは志らく新作落語なのかしら?)
ひとり芝居だから、相手がいると想定してしゃべるのは当たり前だけど、その語感とかが、どうも気になりました。
些細なことですが、些細なことって案外重要だったりしますよね。

最後に伊三郎が家族で花火を楽しんだシーンを回想して、全く同じセリフを言って再現し、泣き崩れる。(その晩、心筋梗塞で妻は亡くなるのです。)
そこで泣いているお客さんもいたけど、私は泣かず。
3日も便秘してた伊三郎、(トイレ関係の部分で何度も爆笑しました)、妻の葬儀の時にお腹はどうなったんだろう?と思ってました。
偏屈者ですね。

8月29日
作   立川志らく
音響 吉田望(ORANGE COYOTE)
照明 しもだめぐみ
制作 ダニーローズ