落語を聴いた日

ナマで落語を聴いた日の覚書と、落語に関係するあれこれについて書きます。

5/21 「不幸の家族」@赤坂レッドシアター

5月21日

一、 古典落語「やかん」 立川志らく 自分は何でも知ってると、自慢しているご隠居さんとのやりとり。○○はなんで○○って言うんですか?が続き、タイトルの「矢が当たってカーンだから、やかん、だ!」までは行かず、(元は、のろ、と呼ばれていたけれど)飲み込もうとした鵜(う)が難儀(なんぎ)するから、うなぎ、だ!のところまで。この鰻が、芝居につながって行きます。

一、 「不幸の家族」 劇団ダニーローズ  去年見た時は、とにかく最後のどんでん返しに驚き爆笑。今回は、そこに至るまでの場面を楽しんだ。泣きと笑いのバランスのセンスが良いなぁ。私は大人の男同士の友情についてはよくわからないのが正直な感想。でも、良かった。今さらながら気が付いた。「不幸の家族」に出てくる呑み屋の名前は『志乃美』→しのび、なるほど! (再演あるかもしれないので、これ以上は…ですね。)帰宅してから去年のプログラムを確認すると、去年も同じ名前。でも舞台上に、その場所の名前は出していたかな?覚えてません。

*何だかすぐに感想を書く気力、体力がなく、遅くなりました。再演するのかな?

 

4/30 立川志らく・柳家花緑 二人会 -アルテリッカしんゆり2017-@宮前市民会館

4月30日

川崎・しんゆり芸術祭の一環の会でした。

一、「浮世床」 立川らくまん 志らくの19番弟子の前座さん。ぎっしり良いものが詰まった感じ。おもしろかった。

一、「不動坊」 柳家花緑 実は10年以上前、横浜で野村萬斎さんとのコラボ企画があって見に行ったことがあります。(萬斎さんが落語やって、終わり頃にはカミ・シモがグチャグチャになってしまったことしか覚えてませんが。) 名前は有名ですよね、柳家小さんの孫。でも、お顔はそんなに知られていなくて、宮前平駅から歩いて来ても花緑と気が付く人が一人もいなかった等、楽しいマクラがたっぷり。もしかして、落語やらない?と思ったくらいでした。勿論そんなことはなく、落語に入ると口調もキリッとし、しっかりおもしろかったです。キラキラした柄入りの着物は派手だったなぁ。講釈師・不動坊火焔の幽霊に扮した登場人物が、天窓から吊るされて降りて行くまさにそのタイミングで客席から鳴る携帯着信音…。それにもうまく切り返してました。そういえば、志らく独演会で着信音が鳴ったことは無い気がします。

中入

一、「紺屋高尾」 立川志らく 着物は黒だったかな。羽織の紐はたいていラッキーカラーの青色です。花緑がたっぷりやった分、志らくの時間が主宰者に指定されたのか、バランス取って自らそぎ落としたのかわかりませんが、マクラ短め、本編もほんの少し短縮ヴァージョンでそれが良かった。例えば、高尾花魁に一目惚れした久蔵が寝込んでいるところに親方が来て話し、頑張って働いて十五両貯めれば逢いに行けるのだと知ると元気になる。そして寝てられないと飛び起きて食べた飯の量、とか。三月十五日に高尾が本当に来て、それを小僧に知らされた久蔵が親方の頭踏ん付けて文字通り飛んで行ったところ、とか。全体の口調も歯切れが良くてとても好きだし、好き嫌いだけでなく、花緑との差をハッキリ感じましたが、他のお客さんはどうでしょう。最初にシンデレラストーリー、と志らくが紹介してましたが、純愛噺です。で、私はたいてい泣くのです。でもパブロフの犬ではなくて、泣かない時もあります。今回は、からすカァで一夜が明けて、久蔵が嘘をついたことを告げ、紺屋の職人の証拠です、と青さが取れない爪を見せるため両手を袖から出して見せたところで…泣きました。心の中に嘘を持っていられなかったのでしょう。 志らくももっと聴きたいしなぁ、自分の「容量」というものもあるしなぁ、困った。(でも翌日には、発売初日の7月のにぎわい座はチケット確保しましたよ。)

4/25 志らくひとり芝居 『不幸の伊三郎』@本多劇場

昨年に続いて再演となった志らくひとり芝居、2日公演の2日目に行って来ました。今年は『不幸の伊三郎』が先で『不幸の家族』は5月に上演です。去年とは上演の順番が逆。

一、「火焔太鼓」 立川志らく 3月のブロッサムも、4月の大全集も行けなかったので、実は久しぶりの落語。やっぱりナマ落語が良い!テレビ放送では言えないようなマクラの話題も楽しかった。「アウッ」という声を聴くのもうれしいし、構成が鮮やかでおもしろい。自分の生活がこの春激変したのですが、この噺を聴いてとても気持ちが良かった。

仲入り

一、「不幸の伊三郎」 立川志らく 座布団が赤色に変わり、洋服で登場。ずっと座っている訳ではなく、立ったり座ったりもあり。最後だけ座布団ではなくステージに腰かけてました。(座布団の脇にはいつもの茶碗も用意されてました。)まず、ハーモニカ演奏で "テネシー・ワルツ"。 ストーリーは同じだけれど、ところどころ新しいギャグが入ってました。…と思います。記憶違いかも。かき氷を作る音→チャウシェスクチャウシェスク、とか。で、2回見て、同じ感想なのですが、私は落語の方が好き。理由は、ギャグ連発は可笑しいけれど、時代が限定されているとどうしても言葉遣いやシチュエーションに違和感を持ってしまう。志らくさんと私は同い年ですが、アイドルの例が高田みづえでは、ね。最後に妻が急死する悲劇にまつわるあれこれも、郷愁の世界に感じてしまい、何だかあまり悲しくないのです。今回初日の落語が「死神」で、アニメで落語を知った新しいファン向け、楽日は志らく右翼(思想ではなく、濃いファンのことです)向けだったのかもしれません。違うかな?

 

4月25日

脚本・演出:立川志らく

音響:川上清美(ORANGE COYOTE)

照明:しもだめぐみ

主催:ワタナベエンターテインメント

 

 

2/5 第三十七回 鎌倉はなし会 立川志らく独演会@逗子文化プラザホール・なぎさホール

2月5日

一、開口一番 「権助魚」 立川らくぼ

一、「親子酒」 立川志らく 理屈が理屈っぽくて、それがまたおもしろい。

一、トーク 立川志らく水道橋博士  すみません、私、浅草キッド水道橋博士もごく最近名前を知ったくらいで、漫才は聴いたことないのです。お二人のトークというよりも、水道橋博士がよくしゃべってました。志らくが普通の人に見えたくらいでした。

仲入り

一、「子別れ」 立川志らく やっぱり、ついホロッと涙が出てしまう。良かった。

※書くタイミングを逃がしてしまい、これしか書けません。

1/30 第203回立川志らく一門会 『師匠の志らくと弟子の志ら乃の親子会』@お江戸日本橋亭

チケット完売し、自由席だったので開場前に整理券発行するくらいでした。昨年の一門会は前座、二つ目、真打の「下剋上バトル」を30分、志らく古典落語とシネマ落語を毎月やったけど、不思議と満席にならなくて志らくファンには穴場だったのです。他の独演会はすぐ完売するのに。今年は親子会(志らくと弟子の二人会)にして、毎回弟子がプロデュースするそうです。まぁ、伝承ホールとはキャパが違いますから、満席になるのは当然といえば当然。桟敷席に若い女性ファン(学生さん?)のグループが10人くらいいて、志らく独演会の客層とはちょっと違う雰囲気。私は若くありませんが、遠慮せず桟敷席の後ろから2列目に座りました。

一、「時そば」 立川志ら乃 お囃子を演奏する下座(げざ)も、一門でやることにしましたとのこと。(舞台上には出て来ません。) 三味線は、二つ目のらく人。少々危なかった。太鼓は、志らく一門ではないけれど楽屋に来ていた寸志(談四楼門下) だったそうです。志ら乃さんがツイートしてました。 楽しい落語でした。箸がころげても…という年代のお嬢さん達がよく笑ってた。

一、「ずっこけ」 立川志ら乃 軽い噺を…と始めたのですが、熱量が高い。そして、BL含めて下ネタ風味がやや強めでした。

一、「淀五郎」 立川志らく 19日の「立川志らく落語大全集」でこれと「中村仲蔵」を聴いて以来、他の人はどんな風にやっているのかなぁ…と興味が湧き、いくつかCD、DVDで聴きました。同じ噺を聴いても飽きません。生で聴いたのは志らくだけだし、志らくファンなので志らくのが一番好きです。(他の落語家は、たいてい2,3日目で淀五郎が絶望して本当に死のうとしますね。それが型なのかな。) 本筋とは別に、林家への(愛のある?)悪口を言うのはいつものこと。談春の悪口も同様。で、この噺を現代に置き換えると、志らく談春だ、と。「意地悪団蔵」「皮肉屋団蔵」が談春で、淀五郎が訪ねて行った時に助言する中村仲蔵が自分だと言うのは、一見「志らくって嫌な奴」と聞こえます。でも、噺のなかで、団蔵は自分だけが良い芝居をすればいいのではなくて、みんなに良くなって貰いたい。わたし(仲蔵)は自分のことしか考えていないところがある、と語っていて、冷静な視点がまたおもしろい。 普段だと笑いの出ないような箇所(仲蔵が淀五郎に「そうだよ、(団蔵の言う通り)本当に腹を切ればいいんだ」と言うところ等)で、笑う客がいても少し待って、揺るがず、自分のやり方で進めていってました。さすが。

仲入り

一、「粗忽長屋」 立川志ら乃 スーパーの話をするのが好き、という話題から始まったので、ここで「グローサリー部門」をやるのか?とチラッと思いましたが、古典を。この噺は大好きだし、個人的な思い出もあります。(認知症の老夫婦。夫は妻が死んだと思い込み、葬式の喪主挨拶のリハーサルをして娘にこれで良いかと訊く。妻は初めは死んだと言われて怒っていたが、そのうち自分が自分の葬式に着て行く服装の心配を始める。これ実話。) おかしな二人(粗忽者の八五郎と、のんびり抜けてる熊五郎)と、行き倒れの番をしている常識人、20銭で賭けをしている見物人の対比が良かった。2月は、がじら、3月はこしら、と親子会だそうです。

1/23 立川談春 新春独演会「居残り佐平次」@品川プリンスホテル・クラブeX

1月23日

一、小噺 立川ちはる 緊張してるのがわかりました。談春さんって、怖そうだもの。でも、厳しく教えられて得るもの、鍛えられるものがあるのでしょう。入門するだけでも根性あると思う。 

一、「堀の内」 立川こはる 二つ目ですから羽織着用して、落ち着いて楽しい噺でした。よくフライヤーで見るのとは髪型変わっていました。 

一、「権助魚」 立川談春 東京で連続公演は久しぶりとのこと。だから450席の会場でもチケットに少し余裕があったのですね。最終日と私の都合が合って買えました。普段は発売即完売ですから。 お茶を出すタイミングに軽く小言を言い、こはるがアニメ「昭和元禄落語心中」に出ているのを知らずに夜中に見て、この声は誰だろう?声優にこんな落語は出来ない。と、「野晒し」の唄の部分 (♪ 鐘がぼんと鳴りゃあ…)を聴いて、あ、こはるだ!音痴に唄いやがって!と午前2時に電話で𠮟りつけたそうです。でも、あいつの声は男でも女でもない、昭和の鼻垂らしたこどもみたいで、落語もやりながら声優として使ってみたら良いと思う云々とほめてました。 この噺は志らく一門で何度か聴いたことがありますが、談春の権助は格段に愉快。魚の説明がいきいきしてた。

仲入り

一、「居残り佐平次」 立川談春 休演日を3日挟んで、1月10日から本日まで11回同じ噺を同じ会場でやる企画でした。そしてこのあとも、5月くらいまで「居残り佐平次」で全国を回ります。 初めに、昔あって今は無い、女郎屋の仕組みや名称の説明。それから本題に入って行きますが、まず、長い。それに、佐平次の「ぼく」「きみ」という言葉遣いは違和感ありました。途中で「おれ」も使ってましたが。暖簾に腕押しとはこのことか、という感じの飄々とした佐平次像はおもしろかった。

私が勝手に持っていた談春像 (迫力たっぷり、キリッとしている、強い、等々)は、勘違いだったかもしれません。みんなに受け入れられる談春、ポピュラーな談春、が正解に近いのかな?

1/19 立川志らく落語大全集〜テーマ 芝居 〜@国立演芸場

1月19日

開口一番 「道灌」 立川うぉるたー

一、「なめる」 立川志らく 16年かけて203席をやると、こういう気持ち悪い噺も入って来るとのこと。当日配布のリーフレットには「『なめる』はほんのシャレです。」と記載されてました。確かに気持ち悪い。若い娘の乳の下に出来た、夏みかんほどのおできをなめる破目になった男の噺です。医者には見放され、易者が22歳の男になめさせれば治るというので、毎日芝居見物に行って該当者を探していたお嬢様とお付きの年増女(と言っても25,6歳!私はその約2倍(笑))、よく考えましたねぇ。できものの事は黙って、療養中の貸家に連れ込み、色仕掛けと最後は力づくでなめさせます。そして、嘘をついて追い返し、その夜のうちに立ち去ってしまう。この気持ち悪いメインのストーリーの合間に、のんきだったり結構エロティックだったりする小噺(ギロチンの小噺に大笑いし、直後にちょっと恥ずかしくなりました。恥じらいを捨ててはイケマセンね。)を男の口から語らせて、後味さっぱり。明るく楽しい一席でした。

一、「淀五郎」 立川志らく 後半の「中村仲蔵」の後日談にあたる噺。件のリーフレットに、歌舞伎を知らない客にもわかるように演じると書いてありました。私は元々能楽ファンなので、歌舞伎の経験といえば、能「安宅」と見比べる企画で「勧進帳」の一部を見たことしかありません。でも、よくわかった。

中入り

一、「中村仲蔵」 立川志らく 「忠臣蔵」五段目が弁当幕 (切腹シーンのある四段目と六段目にはさまれ、また丁度昼時なのでお客が弁当食べながら見るような一幕) と呼ばれていて、その定九郎役をふられた仲蔵の苦悩と閃き、本番での素晴らしさに呆気にとられた観客の反応を「しくじった」と勘違いして落胆。大阪へ修行に出る前の挨拶で、師匠にそうではないと知らされて喜ぶという噺。 「淀五郎」もそうですが、これには志らくの演劇論が相当入っていて、理屈っぽい面もあったけれど聴きごたえたっぷりでした。実際15年くらい演劇をやっている彼ならではの「中村仲蔵」ですね。「(芝居を見た人から)落語より良かったよ!」と言われても、「志らくさん、芝居も良いけど、落語が良いよ。」と言われても腹が立つのです、という主旨のことをこの日のどこかで話してました。私はまだ数回しか志らくの芝居は見たことなくて、昨年の「不幸の家族」が抜群に良かったと思っています。今年再演するそうです。

12/26 シネマ落語の会 素晴らしき哉、人生!@渋谷区立文化総合センター大和田 伝承ホール

12月26日

一、落語バトル

「看板のピン」 立川志ら門

「転失気」 立川志庵

「鰻屋」 立川らく朝

一、「居酒屋」 立川志らく タイトルについて「宗教居酒屋」と志らくさんツイートしてました。まぁ、宗教と言ってもいろいろあります。仏教は落語と馴染み深いからか、主にキリスト教の用語でおもしろかった。居酒屋の小僧(男)がシスターで、主人が牧師、だったかな。

一、「死神」 立川志らく 「死神」は聴く機会が多いのは確かで、「また、死神か!」とつぶやいたお客がいたエピソード、その人の気持ちわかります。でも、今回の「死神」は、今までと何かが違っていて、とてもしっくり来ました。登場する死神のキャラクターかな?事前に映画「素晴らしき哉、人生!」を見たので、自分のなかで混同してMIXしてしまい、違和感がなかったのかもしれません。呪文のアジャラモクレンの次の時事ネタ部分は、「韓国のヌルプム体操が早くラジオ体操になりますように」のような言葉でした。実はわたし、ヌルプム体操がどんな体操でそれを巡って世間でどんな話題になっているか知らず。名前は聞いたことあるのですが。帰宅してから動画探して見ました。

仲入り

一、シネマ落語「素晴らしき哉、人生!」 立川志らく レンタルDVDで先に映画を見ました。検証のしようはないけれど、映画見てないと私はストーリーについて行けなかった気がします。主人公の、自分にチャンスが回って来た!と思ったらやむを得ない事態が起こり、自ら進んで身を引く。それが何度も続く。決して強制されてそうしているのではないのだけれど、報われないなぁという気持ちが少しずつ積もって行き、最後は嫌になってしまう。この微妙な感覚が、映画と落語では違っていて、落語は落語で良いのだけれど、わずかに予想がはずれてしまいました。泣いてる人もいたし、自分も落語は良かったと思います。仲入り前の二つの落語とのリンクが楽しかった。「主人公が生まれて来なかった世界」で、人にとりついて死なせているのがあの死神ですから。 先に映画見なかったらどうだったんだろう?それこそ、「自分が生まれてこなかったら世の中がどうなったか」と同じですね。 

12/23 立川志らく独演会@よみうりホール

12月23日

一、開口一番 「時そば」 立川がじら おっ!羽織姿だ、と思ったら、今月、二つ目に昇進なさったそうです。(落語家で同期昇進の人はいないけれど、探してみると次期アメリカ大統領トランプ氏が同期とのこと。) 本編に入る前に二八蕎麦の由来の話で言い間違え、それをネタにして笑いを誘うあたり、ご立派。志らくだって、10月の落語大全集で肝心の数えるところを言い間違えてますから。ところどころに"今"の言葉を織り込んでいたのは、私はあまり好きじゃないです。

一、『芝浜 後日の噺』 立川志らく 配布されたプログラムに、「今回の趣向は芝浜エピソード1と後日談を古典落語の中から探しました。」とありました。これは、『親子酒』ですね。酔っ払いをやる志らくは迫力あって面白いけど、芝浜の魚屋が年取ってああいう感じになるかな?ならないと思います。

一、『芝浜 以前の噺』 立川志らく これは『天狗裁き』ですね。この噺自体、仕組みがやや複雑で、隣席の年配ご夫婦は終わってから新作だと思って会話してました。天狗から羽団扇を取り上げ、空を飛んで降りた先で瀕死のお嬢様の病気を治す。お礼の四十二両は財布ごと海に捨てるという話…こじつけが馬鹿ゝしくて、返って楽しかった。

仲入り

一、『芝浜』 立川志らく 魚屋の勝五郎、20日間連続飲酒。まさにアルコール依存症ですね。今夜飲ませてくれたら明日から河岸へ行くから…と女房にごねて、最後には(酒を買う金が無いなら)「作れ!」というのがおもしろかった。財布を拾ったのは夢だと思い込ませる部分で、自分の腕が家まで伸び、時を間違えて早く起こした女房を引っぱたく、とか、海の波は誰かがこうやってる(かき混ぜる所作)からだ、とか、は夢だからそう思ったこと。そうかやっぱり夢だったのだと納得するあたりも、おもしろく笑いました。こういう笑いを挟んで、ストーリーが進んで行きます。そして、最後の、夢だとだましてごめんなさい、でも私を捨てないで云々のシーンでは、つい、うっかり、ホロリとしてしまった。年末の落語の定番には私は全くこだわりはなく、(ウィーンフィル・ニューイヤーコンサートのラデツキー行進曲は好き。)どうして芝浜、芝浜となるのかな~と思うのですが。つい、ね。全体としては、少しポピュラー向けな感じがしました。

12/21 立川流 孫弟子の会 「立川流が好きっ!!」@深川江戸資料館小劇場

私は立川流は「まぁ、好き」なんです。談志は大好きです。立川流の落語家の噺を聴いて、つまらないなぁと思ったことあります。他の流派は高座では殆ど聴いたことありません。CDでは聴きます。 また、落語界の仕組みにあまり関心はないです。能・狂言文楽などの古典芸能にも興味があるし、見に行きます。 でも、落語そのものは好きですね。落語を聴く様になって、生きるのがラクになった。

一、「真田小僧」 立川こはる 談春一門の二つ目さん。女性です。いつか聴いてみたいと思っていた人。というのも、2014年9月に談春独演会に初めて行った時、(弟子に厳しいという評判は聞いてましたが)「弟子は一人もいなくなった」と、開口一番から全部談春。めくり自体なかったし、高座返しも確かしなかった。でも、談春一門のこはる、の名前はネット上で見かけるし、フライヤーも出てる。厳しいなかでも、続けているこの人はどんな噺をするのか。父親の低音の声がビシッとキマっている一方、こまっしゃくれた息子のハジケっぷりが底抜けに明るい。息子が講談風に話すところは、見事。カッコ良かった。メリハリがきいている。さすが! うーん、もう一人の女性落語家で真田小僧聴いたことありますが、ハッキリ差がわかりました。

一、「人間っていいな」 立川志の太郎 志の輔門下の二つ目さん。出囃子が「にんげんっていいな」(まんが日本昔話のエンディング曲)でした、よね? これは新作落語で、人工知能により、入門から3日で真打昇進のロボット落語家が登場する噺。構成が緻密で実におもしろい。本編の前のマクラで、自分が落語家になってから家元・立川談志に会った時の思い出話。談志・生志親子会に前座として付き人になり、博多へ。帰路、フライトの待ち時間に、志の太郎の師匠が志の輔ではなく志らくだと勘違いした家元、いろんなエピソードを語る。(具体的な話は無し)「え?師匠(志の輔)ってそういう面があるんだ…」と驚いているうち、だんだん誤解だとわかり生志が訂正したそうです。そして家元は「鱒寿司は、うめぇな」と言ったそうです。爆笑。

一、「天災」 立川談吉 談志の最後の弟子ですが、没後は左談次門下へ移った二つ目さん。みっちり、たっぷり面白かったけれど、この会の時間配分としては長かったと思う。最後の志ら乃が高座に上がった時、ステージ右のデジタル時計が20時53分でしたから。

仲入り

一、「一人相撲」 立川吉笑 この企画の発起人で事務局的な立場にあるのがこの人のようです。談笑門下の二つ目さん。新作落語。さすがに、3ヶ月連続して同じ人の同じ噺を聴くと、新鮮な面白さは減少してしまいました。

一、「庭蟹」(にわかに) 立川寸志 44歳で談四楼に入門した二つ目さん。さらりとこの噺をやったのは人生経験の差か、出演者同士の話し合いでの判断か。はじめ、ん?洒落小町…いやいや違うぞ、主人と番頭の噺だから、なんだろう?初めて聴く噺でした。頭の固い主人が番頭に洒落を言ってくれと頼むが、洒落が全くわからないという筋。きっちり、すっきりでした。良かった。

一、「粗忽長屋」 立川志ら乃 志らく門下の真打です。談志の孫弟子で最初に真打昇進した人。ほぼマクラなしで、粗忽長屋とタイトルも告げて始まりました。私はこの人の迫力、熱量の大きさが好き。その一方で、力を抜くところは抜く。先月も同じ噺を聴いたけれど、少し足した部分もあり、おもしろかった。約17分。最後のお辞儀が実に綺麗でした。1月の志らく志ら乃親子会のチケット購入しました。