落語を聴いた日

ナマで落語を聴いた日の覚書と、落語に関係するあれこれについて書きます。

4/19 立川志らく落語大全集~クレージー落語特集~@国立演芸場

4月19日

開口一番 「世界の終わり」 立川がじら この秋に二つ目昇進披露会をやって、そこでO.Kもらえたら、二つ目昇進が本決定だそうです。創作噺。どうやってこの噺終わるのか?と思ったら…ズッコケました。

「目薬・義眼」 立川志らく 志らくさんの会にはA41枚くらいのリーフレット(今考えていることとか解説とかが載っている)が配布されることが多くて、それを読むの好きです。この二つの噺については、落語の中で二位三位を争うくだらない噺と書いてありました。ちなみに一位は「金玉医者」。 高座ではまず、熊本地震の話題に触れ、さらに2011年の大震災後の"自粛"ムードのなかで3月に予定通り独演会をやったら、客席は半分くらい埋まった。笑っている観客の中にクドカンがいて、こういう時にも人々は笑いを欲しているのだ!と思って、出来たのがドラマ「あまちゃん」とのこと。 二つ連続してやりました。「目薬」でおかみさんのお尻撫でまわすところ、可笑しかった。「義眼」で、医者が目玉をくり抜く時に麻酔しなくてもこの歌を聞けば痛くありませんから、と歌ったのが「どれみふぁそーらふぁ み れ ど」でした。意外な歌が出てきて痛くないでしょ、と。ヤマハ音楽教室ですね。

「転宅」 立川志らく 間抜けな泥棒の噺。ネタおろしだそうです。泥棒に入った先がお妾の家。実は自分も元は泥棒、今の旦那は嫌、あんたのような男らしい泥棒と夫婦になりたい、浮気しちゃだめだからと財布取られ(預かっておくと言われ)て帰る。翌日行くと、誰もいない様子。向かいの家の人に聞くと、引越して行ったよ、今に騙された男がやって来るから、町内でそいつを見てやろうと集まって覗き見している…、と事の顛末を聞かされる。2階に用心棒がいるから静かにしてと脅された話をすると、「よく見ろ、あの家は平屋だ」。その女は元は旅の義太夫語りだった。 楽しく笑いましたが、お腹が痛くなるほどは笑わなかった。

中入り

「鉄拐」(てっかい) 立川志らく (鉄拐の拐は、誘拐の拐で、手偏なんだけどなぁ、木偏になってる印刷物もありました。)(細かくてヤな奴だね。) 中国を舞台にした落語はこれだけだそうです。でも、登場する人間の名前は日本人の名前。不思議です。 上海の大店の創立記念宴席の出し物の大トリを探せと命じられた番頭が、仙境から八仙人の一人、鉄拐を連れてくる。ところで八仙人が「八千人」に聞こえたのですが、それが本来のイントネーションなのかな。たとえば「東海道」も、JR東海道新幹線の車内アナウンスが現代では多数派だけど、談志も志らくも頭を強く言う。「東海道五十三次」とつながると、よりカッコいい、あのイントネーションね。 それは、こっちへ置いといて、この噺、結構長くてストーリーもやや複雑。宴席での出し物や仙術は奇想天外。蛇を呑むカエルとか、人魚の踊り食いとか。鉄拐は、膨れた腹をなでると中からもう一人の小振りな鉄拐を出すことが出来る。出てくる時に、痩せこけた顔が赤くなり、顎がはずれ、喉の奥から手が出て、頭が出てという描写はリアルだった。合間、合間に小さい鳥が落ちました、コトリ。とか、鳩が何か落としました、ふーん(糞)とかのギャグがある。上海の寄席に出ることになり、10日連続興業では客が飽きて落ち目になり、また別の「張果老」(ちょうかろう)という仙人が連れられてくる。(このあたり、落語ファンしかわからないような言葉や言い回しが沢山だったかも。)この仙人は瓢箪から本物の馬を出すことが出来る。が、鉄拐がこっそりその馬を瓢箪から吸い出してしまい、張果老は何も出せなくなる。一方、鉄拐は馬を吸い込んだ為に詰まってもう一人の鉄拐を出せなくなる。では、代わりにお客を吸い込むことにするとこれが受ける。(そのお客たちをどうやって出すのかは触れず。)ある時、ずいぶん腹の中で暴れる客がいて苦しい。見ると「俺の馬を返せ!」と張果老が中に入っていた、でいったん終わり。大作です。これをやる人はあまりいない。生でもう二度と聴くことないかもしれません。 リーフレットに鉄拐仙人の存在感では、自分は師匠・談志に負けると書いてあったけれど、たぶんそうでしょうね。私は録音でしか談志の鉄拐を聴いていないけれど。談志のサゲは、李白陶淵明が入ってた、です。大酒呑みの中国の詩人の名前、もう身近ではないですね。 あれ?志らくが3曲歌ったのはどのあたりだったか、わからなくなりました。まず、美空ひばり「悲しい酒」のメロディで歌詞がどんぐりころころ、さだまさし防人の詩」のメロディで、まず寿限無、そして芝浜。そうか、鉄拐が寄席に出始めて、弟子志願者が来るあたりだ。 落語が終わってからも緞帳はおりず、談志のサゲの話と、5月の下町ダニーローズ『不幸の家族』の宣伝もありました。